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東京地方裁判所 昭和56年(ワ)409号 判決 1983年2月21日

原告

大畑秀夫

被告

株式会社太陽重工製作所

主文

1  被告は、原告に対し、金一四六七万五〇六八円及び内金一三三七万五〇六八円に対しては昭和五〇年一二月三日以降、内金一三〇万円に対しては、この判決確定の日の翌日以降右各支払ずみに至るまで、年五分の割合による金員の支払をせよ。

2  原告のその余の請求を棄却する。

3  訴訟費用は、これを二分し、その一を原告の、その余を被告の各負担とする。

4  この判決は、仮に執行することができる。

5  被告において、金二〇〇〇万円の担保を供するときは、前項の仮執行を免れることができる。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  原告

「被告は、原告に対し、金四一一五万二二五五円及び内金三八一五万二二五五円に対する昭和五〇年一二月三日から、内金三〇〇万円に対する昭和五六年一月二四日から、各右支払ずみに至るまで年五分の割合による金員の支払をせよ。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決及び仮執行の宣言。

二  被告

「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。」

第二原告の請求原因

一  交通事故の発生

1  発生の日時 昭和五〇年一二月三日午前七時一八分ころ

2  発生の地点 東京都江戸川区船堀五丁目六番一号先道路上

3  加害車 普通乗用自動車足立五六す五四七三運転者訴外大森光三(以下「訴外大森」という。)

4  事故の態様

訴外大森は、加害車を運転し前記道路付近の交通整理の行われていない交差点を三角バス通り方面から今井街道方面に向かい進行中、右の道路は最高速度三〇キロメートル毎時と制限されており、かつ、追越しのための右側部分はみ出し通行禁止の場所であるのに、時速約四〇キロメートルの速度で右側対向車線上に進出して同交差点に進入したため、折から同交差点の左側から右方へ進行してきた原告運転の自動二輪車を左斜め前方約一二メートルに発見し、急制動の措置を講じたが間に合わず、同車に自車の前部を衝突させて同車を転倒させた。

5  被害者 原告(昭和七年三月二五日生事故当時四三歳)は、右の事故により、右下腿開放骨折、右距骨踵骨々折、右筋骨々折の傷害を受けた。

二  責任原因

被告は、前記加害車の所有者であり、前記事故当時、被告の従業員である訴外大森において、被告の業務として、右加害車の運転をしていたものである。よつて被告は、自動車損害賠償保障法(以下「自賠法」という。)三条の規定に基づき、原告の被つた後記損害を賠償する責任がある。

三  損害

1  休業損害 金一三四七万四九九一円

原告は、前記事故当時東京架設株式会社(以下「訴外会社」という。)に、熔接工として、給与月額二五万円の約で勤務していたところ、同社に入社後三日目に右事故にあつたものである。そして、原告は、前記傷害により昭和五〇年一二月三日より昭和五五年五月二九日まで休業した。

(1) 25万(円)×53(昭和50年12月3日から昭和55年5月2日までの53か月)=1,325(万円)

(2) 25万(円)÷30(日)=8,333(円)(1日当りの収入)×27(月)(昭和55年5月3日から昭和55年5月29日まで)=224,991(円)

(1)+(2)=1,347万4,991円

2  入、通院慰藉料 金五〇〇万円

原告は、前記傷害により、次のとおり訴外日本医科大学附属病院(以下、「訴外病院」という。)に入院及び通院した。

(一) 昭和五〇年一二月三日より昭和五一年三月二四日まで(一一二日)入院

(二) 昭和五一年三月二五日より昭和五一年七月一日まで通院(実通院二八日)

(三) 昭和五一年七月二日より昭和五一年八月一一日まで(四一日)入院

(四) 昭和五一年八月一二日より昭和五二年三月三日まで通院(実通院三七日)

(五) 昭和五二年三月四日より昭和五二年九月六日まで入院(一八七日)

(六) 昭和五二年九月七日より昭和五四年五月三日まで通院(実通院八六日)

(七) 昭和五四年五月四日より昭和五四年七月一四日まで入院(七二日)

(八) 昭和五四年七月一五日より昭和五五年八月一二日まで通院(実通院四五日)

以上合計入院日数四一二日、実通院日数一九六日であつて、原告は、右の人、通院により多大の精神的苦痛を被つたが、この慰藉料は、金五〇〇万円が相当である。

3  入院付添費 金八二万四〇〇〇円

4  入院諸雑費 金二八万八四〇〇円

5  通院付添費 金七万四〇〇〇円

6  通院交通費 金九〇万五五二〇円

原告の肩書自宅から東京都文京区千駄木一丁目所在の訴外病院までタクシー片道金二三一〇円(往復金四六二〇円)を要したので、実通院日数一九六日における右タクシー代は、合計金九〇万五五二〇円である。

7  後遺障害による逸失利益 金二七四六万四二七四円

原告は、前記傷害により、右下腿機能全癈、右Ⅴ中足骨変形治癒骨折の後遺障害が残つたため、免荷装具なしでの歩行は困難であり、装具を使用しても、疼痛のため連続歩行は困難である。右は自賠法施行令二条の後遺障害別等級表の第七級に相当し、労働能力喪失率は五六パーセントである。また、右後遺障害についての症状固定日は、昭和五五年五月二九日(四八歳)である。

したがつて、昭和五二年賃金センサス第一巻第一表の年齢別平均給与額によれば、四八歳の平均収入月額は、金三一万一六〇〇円であるから、逸失利益は、

311,600×12×56/100×13.116(新ホフマン係数)=27,464,274(円)となる。

8  右後遺障害第七級について原告の受くべき慰藉料は、金六〇〇万円が相当である。

9  右後遺障害については、下腿免荷装具の装着が恒久的に必要であり、一年に一回の割合で買い替えなければならないが、原告の四八歳時からの平均余命は、昭和五三年簡易生命表によれば二八・一五歳であり、一回の装具費用は、金三万七八〇〇円であるから、右費用の合計は、金一〇六万四〇七〇円である。

37,800(円)×28.15=1,064,070(円)

10  以上合計金五五〇九万五二五五円

11  治療費金九三三万八二五三円

12  以上総合計金六四四三万三五〇八円

四  損害の填補

原告は、前記事故に対する損害の賠償として、被告より昭和五五年八月三一日までに、休業補償費金一〇一七万三〇〇〇円、諸雑費金五〇万円、治療費金九三三万八二五三円、通院交通費金八五万〇一七〇円、強制保険よりの支払金六二七万円の合計金二七一三万一四二三円の支払を受けた。

五  以上により未填補の損害額は金三七三〇万二〇八五円となる。

六  弁護士費用

原告は、本件訴訟の提起追行を止むなくされたため、本件の認容額の一〇パーセントを報酬として支払う旨を約して、原告代理人宍倉秀男弁護士に本訴の提起追行を委任したが、右の報酬額は金三〇〇万円を下らない。

七  結論

よつて、原告は、被告に対し、金四一一五万二二五五円の損害賠償請求権を有するので、その支払を求めるとともに、内金三八一五万二二五五円に対しては前記事故発生の日である昭和五〇年一二月三日以降、内金三〇〇万円に対しては、本件訴状が被告に対し送達された日の翌日である昭和五六年一月二三日以降右各支払ずみに至るまで、民事法定利率年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

第三被告の答弁及び主張

一  請求原因一(交通事故の発生)の事実中、1(発生の日時)、2(発生の地点)、3(加害車)は認める。同4(事故の態様)の事実中、原告主張の交差点が交通整理の行われていない交差点であること、原告主張の道路が最高速度三〇キロメートル毎時であること、及び追越しのための右側部分はみ出し通行禁止の場所であること、訴外大森が時速約四〇キロメートルの速度で右側対向車線上に進出して同交差点に進入たこと、訴外大森が、折から同交差点の左側から右方へ進行してきた原告運転の自動二輪車を左斜め前方約一二メートルに発見したこと、訴外大森が急制動の措置を講じたが間に合わず、同車に自車を衝突させたことは認める。同5の事実中、原告がその主張の傷害を受けたことは認める。その余の事実を争う。

二  請求原因二の事実前段は認める。同後段の主張及び事実を争う。

三  請求原因三の事実中、原告が損害を被つたことは認めるが、その額については、次の額を認め、その余を争う。

2 入、通院慰藉料 金二三一万円

3 入院付添費 金八二万四〇〇〇円(原告主張のとおり)

4 入院諸雑費 金二八万八四〇〇円(原告主張のとおり)

5 通院付添費 金七万四〇〇〇円(原告主張のとおり)

6 通院交通費 金八五万〇一七〇円

7 治療費 金九三三万八二五三円

8 下腿免荷装具費が一回につき金三万七八〇〇円

であることは認める。

四  請求原因四の事実を認める。

五  請求原因五の主張及び六の事実を争う。

六  請求原因七の事実及び主張を争う。

七  過失相殺

原告主張の交差点における原告の進路側は、訴外大森の進路に比して明らかに狭路であるばかりでなく、同交差点に進入するためには一時停止の表示が存していたのであり、しかも事故当時、訴外大森の進路たる道路は、折からの国鉄ストのため非常に混雑しており、訴外大森の進路には、渋滞車両のため延々と車両が並んでいたうえ、右交差点からしばらく行つたところの信号機のある交差点では、対向車は右折してしまうため殆んど進行してこないので、訴外大森の運転した車両のみならず、他の車両も、訴外大森同様時速四〇キロメートルで右側対向車線上に進出して交差点に進入していたのである。したがつて、原告においても、一時停止をして右側の安全を確認すべきであつた。しかるに原告は一時停止をして右側の安全を確認することを怠つて減速することなく進行したものであつて、原告にも四五パーセントの過失が存したものというべきである。

第四被告の過失相殺の主張に対する原告の認否及び反論

被告の過失相殺の主張を争う。

原告の進路側には一時停止の標識があつたので、原告は、本件交差点に差しかかり一時停止をして、交差道路の右方からの車の通過を待つた。当時右方からの車両は渋滞して交差点内に停つており、原告が交差点に差しかかる前に原告と同方向から進行して車首を交差点に進出させて左折のために停止している大型トレーラーがあつた。このトレーラーの左側の渋滞車両が流れ、トレーラーはそのまま停止していたので、原告はセンターラインまで進んで停止し、右方を確認したが車両が渋滞し、進行してくる車両はなかつた。原告は更に左方を確認したが、やはり進行してくる車両はなかつたので発進し、進行したところ、訴外大森の運転する加害車両に衝突されたものである。右のとおり原告には何ら過失はない。

また、仮りに原告が本件交差点のセンターラインを通過する際、右方の確認を怠つたとしても、加害車が進行した道路は、追越しのための右側部分はみ出し通行禁止の場所であること、事故当時加害車両が進行していた左側部分は渋滞のため数十台が停止していた状況であつたことなどから、原告が本件交差点のセンターラインを通過する際には、左方から進行してくる車両を確認する義務はあつても、右方から通行禁止場所をしかも道路右側をあえて交通法規に違反して進行してくる車両があることまで予測して車両を運転すべき義務はない。したがつて、原告には何ら過失はない。

第五証拠関係〔略〕

理由

第一  責任原因について

一  請求原因一の事実中、1、2、3の各事実は当事者間に争いがない。

二  請求原因4の事実中、原告主張の道路が最高速度三〇キロメートル毎時であること、及び追越しのための右側部分はみ出し通行禁止の場所であること、訴外大森が交通整理の行われていない原告主張の交差点に、右制限速度毎時三〇キロメートルを超える時速約四〇キロメートルの速度で進入し、折から同交差点の左側から右方へ進入してきた原告運転の自動二輪車を左斜め前方約一二メートルに発見し、訴外大森において急制動の措置を講じたが間に合わず、原告運転の右自動二輪車に自車を衝突させたこと及び原告がその主張の傷害を受けたことは当事者間に争いがない。

そしていずれもその成立に争いのない甲第八号証、乙第六号証の一から七までと証人大森光三の証言、原告本人尋問の結果及び弁論の全趣旨を総合すれば、訴外大森は、交通渋滞の交差点において、先を急ぐあまり、折から追越しのための右側部分はみ出し通行禁止の道路上を進行中であつたにもかかわらず、その進行車線上に連続して渋滞中の車両を追い越して南から北へ交差点を通過しようと試み、進行車線からたまたま空いていた右側反対車線にはみ出したうえ前記速度で交差点を突つ切るべく進行した結果、渋滞中の進行車両の間約一・七メートルの間隙を縫つてかなりの速度で走り出たうえ西から東へ直進して右交差点を通り抜けようとした原告運転の自動二輪車の右側横腹部分に対し、右交差点内の南から北への反対車線上において、自己の運転する普通乗用自動車を衝突させたものであること及び原告の受けた前記傷害は、右衝突によるものであることを認めることができる。右認定を左右するに足りる証拠はない。

三  請求原因二の事実中、前段の事実及び原告が損害を被つたことは当事者間に争いがない。

四  以上によれば、被告は、請求原因一、1、2、3及び前記二に認定した事実関係(以下右における事故を「本件事故」という。)によつて原告が被つた後記認定に係る損害を賠償する責に任ずべきである。

第二  原告の被つた損害について

1  休業損害について

いずれも弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる甲第九号証の一から五までと原告本人尋問の結果を総合すると、原告は本件事故当時、控え目にみても、一日当り金七〇二八円の収入を得ることができたものであることが認められる。原告本人尋問の結果中、原告の収入に関する主張に沿うかのような部分は、これを裏付けるに足りる客観証拠を伴わないからこれを採用しない。もつとも右甲第九号証の二、三、五によつて認められる原告の反物販売手数料収入については、後記乙第七号証に照らすと、安定性、永続性について疑問があり、この疑問を解消するに足りる証拠もないから、これをもつて原告のいわゆる逸失利益算定に当たつての基礎とするのは相当でない。成立に争いのない乙第七号証は必ずしも右認定をさまたげるに足りるものではない。他に右認定を左右するに足りる証拠はない。従つて、原告の年収は、少なくとも金二五六万五二二〇円と算出される。

(7,028(円)×365=2,565,220(円))

また、いずれも原本の存在と成立に争いのない甲第一号証から同第四号証まで、同第七号証、成立に争いのない同第六号証並びに原告本人尋問の結果及び弁論の全趣旨を総合すれば、原告の本件事故による収入のない休業期間は、昭和五〇年一二月三日から昭和五五年五月二九日までの四年五か月二七日間であり、この間前記一日当り金七〇二八円、年額金二五六万五二二〇円の収入を得べかりしものであるのにこれを本件事故のために得られなかつたものであることを認めることができる。右認定に反する証拠はない。

従つて、右による原告の休業損害は、控え目にみても金一一五一万九四七七円となる。

(2,565,220(円)×4(年)+2,565,220(円)×5/12(5か月分)+7,028(円)×27(日)=11,519,477(円))

2  慰藉料額は、前記当事者間に争いのない事実、前記及び後記認定の各事実その他前記各証拠により認められる原告の被つた傷害の部位、程度、その予後の状況、年齢、生活関係、事故の態様、これに対する被告の対応、本訴の経緯その他諸般の事情を考えれば、入院、通院、後記後遺症の分を合わせて金一〇〇〇万円が相当である(右のうち入、通院慰藉料金二三一万円については、当事者間に争いがない。)。

3  入院付添費

金八二万四〇〇〇円(当事者間に争いがない。)

4  入院諸雑費

金二八万八四〇〇円(当事者間に争いがない。)

5  通院付添費

金七万四〇〇〇円(当事者間に争いがない。)

6  通院交通費

原告主張に係る金九〇万五五二〇円のうち、金八五万〇一七〇円については、当事者間に争いがないが、右を超えて原告主張の通院交通費を要したことについては、原告の全立証その他本件全証拠によるもこれを認めるに足りない。

7  後遺症による逸失利益

原本の在存及び成立に争いのない甲第七号証、成立に争いのない同第一〇号証と弁論の全趣旨によれば、原告には、本件事故による前記傷害について、右下腿機能全廃等の後遺障害があり、この後遺障害は、本件事故との間に相当因果関係がある(なお、これを否定する被告の主張には、何ら聴くべきものがなく、また、鑑定の申請についても、これを必要とすることについて当裁判所として納得させるに足りる説明は何もなされていない。)こと、右後遺症については昭和五五年五月二九日に症状が固定したものであるが、右固定時の原告の年齢は四八歳であり、労働可能年数は一九年であること、右後遺症は自賠法施行令二条後遺障害別等級表の第七級(労働能力喪失率五六パーセント)に相当することが認められ、右認定を左右すべき証拠はないから、後遺症による逸失利益の額は、金一七三六万〇八一三円である。

(2,565,220(円)×0.56×12.0853<ライプニツツ係数>=17,360,813)

8  後遺症慰藉料は、前記2の入、通院慰藉料とともに併わせて判示したところである。

9  下腿免荷装具費

一回分につき金三万七八〇〇円を要するものである(この点については当事者間に争いがない。)ところ、弁論の全趣旨によれば、原告は右下腿免荷装具を必要とし、かつ、これを少くとも三年に一回更新するものと認めるのが相当であつて、右認定を左右するに足りる証拠はない(なお、二年に一回更新を要する場合も、ときにはなくもないであろうし、右三年の途中で破損することもありうることを考慮して、いわゆる中間利息の控除はしないのが相当である。)。従つて、当裁判所に顕著な原告の四八歳以後の平均余命二八年につき計一〇回分の金三七万八〇〇〇円が、原告の被つた右の点についての損害であるというべきである。

10  よつて、以上の1から9までによる原告の損害額の合計は、金四一二九万四八六〇円となる。

(11,519,477(円=(1))+10,000,000(円=(2))+824,000(円=(3))+288,400(円=(4))+74,000(円=(5))+850,170(円=(6))+17,360,813(円=(7))+378,000(円=(9))=41,294,860(円))

11  治療費

金九三三万八二五三円(当事者間に争いがない。)

12  以上による総損害額は、金五〇六三万三一一三円となる。

第三  過失相殺について

いずれもその成立に争いのない甲第八号証、乙第六号証の一から七までと証人大森光三の証言及び原告本人尋問の結果を総合すれば、(原告が、前記認定の交差点に入るに際し、一時停止の標識に従つて一時停止をしたかどうかについては争いがあるが、仮に原告が一時停止をしたものであるとしても、)原告は前記認定の態様により、交通頻繁で折柄直近の進行方向南北の左側車線が渋滞している交差点内を、車の間をすり抜けて走り出したうえ通過するに当たつての左右の安全確認及び速度の抑制において十分でない不注意な点があつたものと認められ、右認定を左右するに足りる証拠はない。そして右の各不注意については、二〇パーセントの割合による過失相殺をするのが公平である。従つて右の過失相殺相当額は、金一〇一三万六六二二円となる。

(50,633,113(円)×0.20=10,126,622(円)

第四  よつて、以上の差引残額は、金四〇五〇万六四九一円となる。

(50,633,113(円)-10,126,622(円)=40,506,491(円)

第五  填補された損害額

原告の自陳するところによれば、原告が被つた以上の損害に対して填補された金額は、金二七一三万一四二三円であるから、これを控除した残額は金一三三七万五〇六八円である。

(40,506,491(円)-27,131,423(円)=13,375,068(円)

第六  弁護士費用

弁論の全趣旨によると原告は本訴の追行を宍倉秀男弁護士に委任したことが認められる。また、本件事故と相当因果関係のある弁護士費用としては、事案の内容、審理の経過、認容すべき額等本件における諸般の事情を総合すれば、金一三〇万円(認容すべき額の一〇パーセント弱)が相当と認められる。右各認定を左右するに足りる証拠はない。

第七  結論

以上によれば、原告の本訴請求は、本件事故による損害賠償として、合計金一四六七万五〇六八円及び内金一三三七万五〇六八円については本件事故の発生した日である昭和五〇年一二月三日から、内金一三〇万円については本判決の確定した日の翌日から、それぞれその支払ずみまで、民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める部分について理由があるから、右理由のある部分を正当として認容し、その余は理由がないからこれを失当として棄却することとし、訴訟費用の負担につき民訴法八九条、九二条を、仮執行の宣言及びその免脱宣言につき同法一九六条を、各適用し、なお被告に対して仮執行の免脱のためには右認容額全額(認容された遅延損害金額を含む。)のほか、今後二ないし三年間分の遅延損害金相当額をも加算した金額の範囲内で金二〇〇〇万円の免脱担保額を供させるのを相当と認め、主文のとおり判決する。

(裁判官 仙田富士夫)

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